あのこのむかしばなし

あのこのむかしばなし

(閲覧注意、きつくなったら無理せずに)


・・・・・暑いな・・・今夏だから当然なんだけど。

こう言う日は決まってあのことを思い出す。


今でもはっきり覚えてる。

今日と同じ、うだるような暑さの夏だった。

あの出会いが今の『私』を作った。










十数年前_____

「さっさと手をうごかしやがれ、この愚図!!!」ドンッ

「っ・・・・ごめんなさい・・・・」

「ッチ・・・だからてめえはだめなんだ。」

「あんたは忌み子なんだからせめて人の役にくらいたってよ。

 生かしてあげてるだけありがたいと思いなさいよ?!」

「・・・・はい。(・・・痛いなぁ)」


『私はダメな子。悪い子。存在しちゃいけない子。

 他のみんなは綺麗な紅い目と銀髪なのに私だけ違う。

 私だけ蒼い目と黒い髪。

 なんでだろう?ただ色が違うだけなのに、なんでこんなふうに言われるんだろう?

 なんで?ただそこにいるだけなのに・・・なんでなの・・・・?』 


『私のお部屋はお外にある木と木の交差した壁がある部屋。

 周りが山だから夜になると寒いし、何か動物の声が聞こえてくるの。

 あの人たちはいいなぁ。

 だって大きなお部屋で何にも気にせずにゆっくり寝れるんだもん。

 私は寝ようとしてもなかなか寝れないんだ・・・

 いいなぁ、羨ましいなぁ。私もあんな大きなお家で寝てみたいなぁ。』




毎日、毎日、そのことばかりを考えていた。




でも私は術式を持っていた。


(後から判明したことだが、

 この家は千年前から存在する『白山』と言う家系で、

 実在したとある術師を神と祀っていたらしい。)


その術式は『呪力を通して情報をやり取りする』と言うようなものだった。

使い方のわからない私は術式で遊んでいるうちに

蝶のような式神を出せるようになった。

夜な夜な蝶を出しておしゃべりをするようになった。


しばらくはバレなかったのだが

夜に蝶たちに話しかけてたのが聞こえてしまっていたようで

聞いた者たちに驚かれ、話は伝わり、村中へ広がった。

その噂を耳にした者は面白半分で見に来た。


その中には白山の者も居た。

でも特に何もなかったかのように離れていった。


この日から暴力が酷くなった。もはや拷問の域と言ってもいい。


何回か熱した鉄を当てられた。

しばらく当てられた跡がジュグジュグと音を立てて

痛いという言葉では言い表せられないほどの苦痛を味わった。


凍えるような寒さの夜に水をかけられたまま放置された。

手足がどんどん冷えていって、思うように動かなくなっていった。


逆にとんでもなく暑い日に熱湯をかけられ、火で炙られ。

痛かったよりも、熱い、燃えてしまいそう。それだけが頭に残っている。


死ぬのかな?そんな考えが気泡のように浮かんでは消えていった。



だがこの地獄でも優しくしてくれる人がいた。


「みんなが見に来てるのここ、だよね?

 あれ、女の子がいる・・・お〜〜い、大丈夫〜〜〜?」

「だぁれ?私のこと見に来たの?」

「そうなのかな〜・・・?てか怪我やばいじゃん!

ちょっとおいで、手当したげる。」

「え、でも・・・・」

「いいの、いいの!うち黒川花美ね。あんた名前あるん?」

「・・・・白山、一会。」

「一会ちゃん!いい名前やん。・・・うわぁ、怪我ひどぉ・・・。

 この火傷とかどうやったら付くん・・・」

「・・・・(変な子、私みたいのに優しくして何が楽しいのかな。)」


本当に花のような明るい笑顔で向日葵の様な人だった。


「今日はね〜・・・じゃ〜ん、どんぐりの首飾り!

 これ自分で作ったんよ!すごいやろ〜!」

「・・・・綺麗な形してるんだね」

「な、そう思うやろ?!これ頑張って同じ形のどんぐり探したんだよ!凄ない?!」


「これな、オオバコっていう草なんよ。

 これで草相撲しよ〜よ!ルールは簡単ね、先にちぎれたほうが負け。

 はっけよ〜〜い・・・のこった!!!」

「は?ちょっと待ってよ?!早い早い早い!!!」

「はははwうちの勝ち〜〜!一会はまだまだですなぁ〜?」


「うちは将来、花屋さんになるの!花って綺麗じゃん、

 それでみんな笑顔になれば いいな〜って!」

「ふ〜ん・・・頑張れば。」

「ちょっと〜!反応うっす〜い!」


今思い返すととんでもなくそっけない態度だったと思う。

でも、めげずにあの明るさで接してくれた。

よく愛想をつかさないなと考える時もあった。


でもどこかあの時間を、花美と遊ぶ時間を楽しみにしていた自分がいた。

そのことを自分で自覚したのはある日の昼下がりだった。


その日は朝からとても気温が下がった。

相変わらずの拷問を受けた。

感覚は寒さのおかげでいくらか麻痺していたのでいつもよりかはマシだった。

昼になっても温度が上がるどころか若干雪がチラチラ降り出してくる始末だった。

(ここ最近花美が来てないな・・・まあいつか来るでしょ)

そんな風に考えてた矢先、彼女は来た。


この村の長が代々受け継ぎ、身ににつける面布をかぶって。


「花美・・・?どういうこと?」

「どういうこともこういうこともないって。見たまんま。

 てか気づかなかったの?黒川ってのはこの村にうちら以外にはいない。

 ほんとあんたって無知だよね。」

「気づけるわけない!!!だってあんなによくしてくれた!!!

 あんな奴らみたいに私のことを・・・!」

「まじかぁ・・・あれただの演技だったんだけど。

 なんていうか・・・そんな信用してたわけ?うちのこと。

 そりゃ嬉しいこったね。ごめんだけど、頭ではずっとあんたのこと貶してたよ?」

「じゃあなんで優しくしたの?!なんで光を見せたの?!

こんな風になるなら見たくなんてなかった?!なのになんでっ・・・」

「あー、もう!うるっさいな!!!うちらは上辺だけだったつってんの!!!

 いい加減理解しろよ、この人間のクズ」

「・・・・大っ嫌い、花美なんて、大っ嫌い!!!!」

「勝手に嫌えば?元々よろしくするつもりとかなかったし。

 じゃあね、これからうちここの村長だから〜。」


正直、ここで何かしら引き留めでもしていたら結末は変わったんじゃないかと思う。

でも、そうする余裕も、思いも、まずそんな考えすら浮かんでこなかった。

だから突き放した。

いや、ただ単にこの現実を認めたくなかったのかもしれない。

そこはもう覚えていない。

なぜならその後が過酷すぎたから。













(ここからまじの閲覧注意です。もう前半できつい人はここでリタイヤしてください。多分伝書桜史上、最も非道な表現と言っても過言ではない。)









拷問を受けた。それは変わらない。

内容も段々一極化してきていたので慣れたもんだった。

痛みや感情なんかはもうとっくの昔に使い物にならなくなった。

抵抗するということにも、安楽へ逃げるということにもそんな気力も手段もなく。

ただただ諦めていた。


だが問題はそれではなかった。


問題は私のことを慰み者にする、という話が出ていたことだった。

この話が耳に入った時は本当に耳を疑った。

意味はわからないけど文脈等からなんとなく推測できる。


(これは流石に・・・・でもまあいいか。こんなのでも一応役は立てるもんな。)

希望なんてものを持っていたとしてもいつかは砕かれる。

そんな思考で毎日を過ごしていた。





そして正式に“そのこと”が決まった。


うだるような暑さの夏だった。


決まってすぐ、何人かの男が来た。


(もうどうでもいいや)


目を閉じて


さあもうすぐその時だという瞬間に



「ちょっと、これどういうことなのか説明してもらおうかしら?」


それはぶっきらぼうだったが、確かに救いの一言だった

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「で・・・・とりあえずこの欲に塗れた下郎どもは伸したけど・・・。

 君、大丈夫・・・・なわけないわね。」


その人は桜宮朱音と言った。


「えっと・・・とりあえず名前ってある?」

「・・・・言いたくない。(デジャヴって言うんだっけこういうの。)」

「そ・・・・じゃあまあ、とりあえずこっから出ようか。」

「・・・・・は?」

「あはは!その顔私好きだわぁ。とりあえず鍵は空いてるし、出ておいで?」

「・・・・・やだ。」

「なんでさ?嫌だとか思わないの?こんな扱いで。」

「前は思ってたよ。でも思うだけ無駄だったから。

 ここにいた方が変に騒ぐよりずっと楽。」

「・・・・じゃあ私の我儘で連れてくわ。」


そういうと朱音さんは私のことを抱き抱えた。


「え、ちょっ・・・おろして!!」

「え〜・・・やだ♡言ったろ?私の我儘だって。

 私の趣味みたいなもんなんだわ。こういう子を拾ってうちで育てんの。」

「・・・・・(変な趣味だな)」


そうして、村の外に停めていた彼女のバイクの前まで来た。

「あ、一応言っとくわ。私、運転荒いからしっかり捕まっときな」

「何がっ・・・」

「飛ばすわよ!!!!」

「?!?!?!?!」


バイクのスロットル全開で来たのは大きくて綺麗な日本家屋。

(綺麗・・・ここどこ・・・?)


「ただいま〜!みんな〜新しい兄弟が増えるわよ〜!」

呼び掛けると、たくさんの人が走ってきた。

「ほんと?!」「やった〜!!」「姉さんお菓子作ろ!その子の歓迎会しよ!」「いいよ〜、やろやろ」「どんな子なんでしょうかね〜、楽しみです。」「女の子がいいな〜!一緒に遊びたい!!」

「はいはい、落ち着きなさい(苦笑)。ちょっとお風呂沸かしてきてくれない?この子、だいぶ訳ありでね。まずは綺麗にしてあげたいの。」

「はぁ〜い!!」「行こー!」「俺、お茶かなんか淹れてくるわ」「さっすが長男!気が利くぅ〜」

「全く・・・・みんな明るくていい子でしょ?

 ま〜、すぐには信じられないかもだけどね」

そう私に微笑みかけた。

その微笑みが花美と重なって仕方なかった。


「は〜い、みんな集まった?では、毎回恒例となりました!この子の名前を決めよう会議〜〜!!!」

「「「「「「いえ〜〜〜!!!」」」」」」

「どんどん言ってこうか!もう口々にだしちゃって!」

「加奈子!」「詩織・・・とか?」「ん〜、聖子!」「いや、歌手やん。あ、俺は瑠衣かな」「これは?咲夜」「う〜ん・・・・、あ、礼佳とかどう〜?」

「はぁい、全員出した?じゃあ、ここに出た名前あるから好きな名前、選んでみる?」

「え・・・いいんですか・・・?」

「いーの、いーの!むしろ積極的になって!」

「じゃ、じゃあ・・・・」

そう言って私は一つの名前に手を伸ばした。


「礼佳・・・礼佳がいいです・・・・」


「ほんと?!やったぁ〜!あ、私、凛々華って言うの。よろしくね!」

「あ、凛、ずるーい!私、紅葉ね!!!」「抜け駆けすんな凛姉!!俺、銀杏!!」「私もします!紫穂です。よろしくお願いしますね。」「僕は郷琉。仲良くしよ!」「俺、祇恩な!この中での最年長!」

「あ、ええっと・・・よ、よろしくお願いします・・・?」


桜宮家の人たちは本当に私によくしてくれた。彼女が化け物が見えることを言ったら、何と全員同じものが見えるし、私と似たような力を持っているのだ。


朱音、凛々華、紅葉、そして銀杏は呪術師だった。

「あのお化けみたいのは呪霊って言って、貴女の持つ力は、術式っていうの。私はそれを使って人を助ける仕事をしてるのよ。」

そう朱音は言った。そしてどんなふうに使うのかも教えてくれた。


私は小・中学校に行ってない。だから家族総出で勉強を教えた。私は自分で言うのもなんだが頭が良かったので、割とすぐ解けるようになった。拾われるまでのことも詮索して来なかった。新しいことも初めて知った。美味しいご飯も食べさせてくれた。暖かいお風呂にも入れてくれた。


      家族の温もりを感じさせてくれた。


しかし、そんな中私は、

(今はよくしてもらってるけど、どうせそのうち裏切るんだろうな・・・・・)

と人間不信に陥っていた。

我ながら捻くれた考えだとは思う。


そんな中、未だ暗い私を励まそうと凛々華はあるものを作った。

「今日はね〜〜〜じゃ〜ん!!これ庭に落ちてるどんぐりで作った首飾り〜!上手くできてない?!」


「今日はね〜・・・じゃ〜ん、どんぐりの首飾り!

 これ自分で作ったんよ!すごいやろ〜!」



それを見た瞬間、礼佳は・・・・・泣いた。


壊れてからというもの誰1人として感情を見せることがなかった礼佳が泣いた。


「ヒック、ウウッ、ヒグッ、ウワァァァァァン!!!!!!」

「え、れ、礼佳?!ごめんね、迷惑だった?!う、ど、どうしよう・・・あ、そうだ」

と凛々華はないてる礼佳をだきしめた

「えらいね、よく頑張ったね、もう我慢しなくていいんだよ。」


「落ち着いた?」

「うん」

「今まで大変だったんだよね・・・なんかあったら何でもいいから私たちに話してよ、できる限りたくさん手助けするから!!!」

「うん。」

それからというもの、私はここの家族に懐いていた。

特に凛々華には懐いて、何かあるごとに

「凛姉、凛姉」と着いていったのをとても覚えてる。


「凛姉、あのね・・・・あのね、ここに来るまでね・・・」

と過去を切り出しても、凛々華は時々頷くだけで何も言わなかった。

「そっか・・・そりゃすぐ人を信じられるわけないよね・・・。

 うちも最初はそうだったもん。」

聞けば、ここの家族は全員拾われた、救われた子なのだそう。

「話してくれてありがとう。これからもよろしくね!」

過去を話してもいつもと変わらず笑顔で接してくれた。




うだるような暑さの夏だった。





私はあの人がいたから、あの人救ってくれたから、今があると思っている。

あの時、こうしていればなんていつも思う。

でももう戻れないから、前を向いていよう。



















闇の中はもういいや
























あの色づき始めた葉桜が私を急かすから














さあ







































進もう



あのこのむかしばなし








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